きれいなノートは、すべての生徒にとって「正義」ではない②
前回、①で「きれいなノート」=「できる子」ばかりではないこともあるということと同時に、「計算の行数が多いノート」や「ノートを取ることや作ることだけに命をかける」生徒があまり「点数」を取れない場合もあることに触れた。
さらに、「数学」の計算例を挙げ、小学校で習ったルール、「九九は変わらない」ことや「( )の前の-の考え方」、証明問題以前の基本的な三角形の決定の考え方などに触れた。
★意外と授業中「ノートになんてこんなこと書かなくてもいいや」と「分かったつもり」のことが、後で見直すとどうしても分からず、成績が伸びない原因になっていることもある。
例えば「interesting」と「interested」の違いを知りたいと思うのであれば、先生に聞いたり、参考書やネットで調べたりして「わかった!」で終わりにしてしまってはなかなか「テスト本番」で使えるようにならない。
自分が知りたかった「違い」と、説明で見た「例文」を「5~10文程度」セットにし、「ノート」に英文・和訳・補足説明と書き留めておくだけでも、思い出す確率は上がってくるし、後から調べるときも「楽」になる。おそらく、例文を書いているうちに、「it…to…」や「SVOCのCの部分で使われる例文」など役に立つ情報も同時に得られるだろう。
実力アップのためには、「答え」のみを欲しがってはいけない。勉強も、"Rome wasn’t built in a day."だし”More haste, less speed.”だと思う。たいていの人は、すごい「天才」に生まれついているわけではない。「できる人」に追いつけるか、追いつけないかは分からないが、その人たちとの「差」をつめるのは「努力の時間」以外にない。
◆◆◆「推し」ができたとき「知りたい」と思うことはその人の「名前」だけではないだろう。「推し」よりははるかに魅力は劣るかもしれないが、単語だって、一つの出会いと考え「知りたい」と思えば、「1単語に1つの意味」を覚えるだけでは、全然心がワクワクしない。◆◆◆
例えば、「陥れる」と言う漢字の読みがテストで出そうなときに、その漢字がワークに載っていれば「印」をつけておき、テスト前に、1回見直す、あるいは、テスト前に漢字と送り仮名を「1回」ノートに書きとめたりする人はいるだろう。でも、20回「読みだけ」を書く人はいないし、そんなことをしても意味ない、という人もいるだろう。この場合、「読み書きセット」または、その漢字を使った「熟語」などを練習できる「ノート」を持っていると忘れにくい。「なに?ノートがない?」…では、「タブレットに自分で『読み書きノート』をつくろう」…いつでも確認できる「自分だけの『弱点』ノート」の完成だ。
単語や漢字なら、「カード」も有効だ。ただし、情報量という点、なくす恐れが「ノート」よりも高いので、僕は「ノート」を使っている。
さて、「パスカルの三角形」を学ぶときに何段目までノートするだろうか。こんなもの、と思ってノートを取らない生徒もいるのではないか。5段目、6段目まではよく問題でも使うのでノートに書く生徒は多い。しかし、(a+b)の基本形なら考えられるが、(2a-b)の5乗になるととパニクリ、慌てて実際に「計算を始める」生徒は後を絶たない。第一回にも掲載したが、「代入するとき、-の数を( )にくるむ」は大切なルールだ。
ところで、読んでいただいている皆さんは、計算するとき、答えが分かればすぐに解答欄に書く方だろうか…実は、計算問題を写さず、いきなり計算を始める生徒、答えだけをノートに書きだす生徒を「嫌がる」数学の先生は多い。
例えば…次の計算をしなさい
(1)5x+5-(2x+3)=
この(1)5x+5-(2x+3)を書かずにいきなり「5x+5-2x-3」と生徒が始める、あるいは答えだけ「3x+2」とノートに書くのを「嫌がる」数学の教師は実際に多い。
実は、数学において先頭の式は、「テーマ」が秘められている。例えば単純な「計算問題」であっても、出題者の狙いを見抜いて計算していく必要がある。この問題であれば、後半の「かたまり -(2x+3)」を開くときに間違いが多くなる。答えは同じ「3x+2」でも、問題自体が「5x+5-2x-3」なら、「同類項をまとめられるか」ということになるだろう。
「5x-4y=1」と言う式を「一次関数」の式とみて問題を解きだすか、「5の倍数から4の倍数をひくと1になる」と読み、「不定方程式」で答えの組み合わせを求めていくか…「問題をよく読み、その式が何を表しているのか」考えることによって数学的言語能力は広がっていく。余談ではあるが、ある教科書には「不定方程式」を一次関数のグラフで考え、「そのグラフの整数解の(x, y)の組み合わせを求める」という考え方も掲載されている。
話を戻すが、この最初の一行目の式を書く、または写す際、「-(マイナス)の処理」を意識して進めていくべきなのは言うまでもない。
では、次に、7!=7(7-1)!はどうか。こんなの簡単だよ。「7×6×5×4×3×2×1じゃない」というキミ。じゃあ、「分数の!」を考えたことがあるだろうか? この式は公式として「高校の教科書などに載っている」けれど、「どんな考え方」を表していて「どんな問題に使えるからこのように変形する価値があるのか」説明できるだろうか。
★「塾で勉強しているから予習なんていいや」大切なのは復習、できなかったことをマスターすればいい…『本当に予習なんて必要ないのか?』昔は、「予習型」「復習型」というタイプ分けの勉強法もあった!
予習段階で、授業中、集中して聞くべきこと、後で時間をかけて調べたいこと、疑問に思ったこと、分からなかったことを「ノートやタブレット」に残しておく。授業中、解決できたことと、できなかったことを仕分ける。家に帰り、納得できなかったことは調べ、あるいは、自分ができなかった問題を、ノートに張り付け、後で繰り返し解く。それがキミだけの「オリジナル弱点ノート」になっていく。
「弱点ノート」の問題がすべて解けるようになった頃、ノートの内容次第では、受験勉強を半分終えている人やいきなり過去問演習からスタートできる人もでてくるはずだ。
今、勉強している科目がもし、「受験」に必要なことであれば、どんなことでも無駄なことではなくそれは「入試」に直結する。
「予習」「授業」「復習」のサイクルを続けることは確かに面倒くさいが、「やる」「やらない」では最後に大きな実力差となる。
「苦手教科」であれば、「予習」もしにくいなずだ。ならば、まずは、教科書を読んで、自分が「よくわかんねえな、これ」と言う部分を、10か所決め、にマーカーを引き、そこを「ノート」や「タブレット」にメモするだけでもいい。
「得意教科」ならば、それこそ「先生の言うことは一から十まで分かりますよ」という「ノートを作れ」ばよい。それでも、おそらく、学校の先生が自分の知らなかった「解釈」や「解き方」「考え方」を与えてくれる瞬間があるはずだ。それを楽しみに授業を受ければよい。
◆◆◆受験が終わって、「こんな簡単なことだったのに…」「前々日に一回解いたはずなのに」と後悔したことは大人でも経験があるはずだ。もっと前に…「定期テストの前に」「小テストの前に」、「ノートやタブレット」を「弱点ノート化」し、自分なりの準備方法を確立できていれば「その教科を好きにならない」までも、受験までには「点数を取る」ことが徐々にできるようになる生徒は多い。◆◆◆
「勉強が好き」なんて生徒は「親」が思っているよりも「はるかに少ない」。「この先生なら」と思って塾に預けたとしても、その先生がいなければ勉強が進まない、という状態の生徒は多い。「あと一回やっておけば」という生徒は、結局、先生に頼り過ぎて、「何回で覚えるか、解けるようになるか」自分で判断できないまま、勉強してしまっているケースが多い。
◆◆◆ここで、ちょっと角度を変えて、「ノートの話」を続けよう。親としてみれば、「勉強が今よりもできるようになって欲しい」「進学率が少しでも良い学校に合格して欲しい」…塾なんだから、ノートぐらい生徒にきちんと取らせてほしい、と思いたいところだ。◆◆◆
◇その前に…ちょっとお付き合いいただきたい。
塾で、「小テスト」を返すと、授業終了後、必ず講師室を訪れ、
「ウチのお母さん、数学苦手だったんだよ、だから遺伝だよ、遺伝」
とか
「オヤジ、英文読むのも遅いし、単語の暗記ダメだったんだって、だから俺もその血をひいいてるんだよ」
と講師もビックリするようなことを平然と言う生徒が数名はいる。
講師としては、「やればできる」と背中を押そうとしているところ、これを先手で言われると一瞬ぎょっとなる。
家での保護者の言動も「我が子」の成績を「左右」する場合もある。ご家庭ではご自分の「成功体験」を伝えるようにするのがよいかと…。
★自分の勤めていた塾でも「一からノートの取り方教えます」と常に「入塾時の面談」で保護者に伝えていた。「ノートは大切」「デキル子はきれいなノートを取る」と考える保護者がけっこう多いので、この言葉は、親の印象をよくする効果がある。つまり、塾講師としては半分は「ノートを取らせる意義がある」と思いつつ、「親に対する塾の印象」のために言っているというのが本音なのである。
◇◇◇自分の勤めていた塾でも「ノートの取り方をイチから教えます」、と常に入塾時の際伝えていた。が、中には「汚いノート」でも「抜群の成績」を取る生徒はクラスで一人二人ではない。こういう生徒は「ノートをちゃっかり借り」「本番での強さをいかんなく発揮し」、得意教科で高得点を取る。
一方で、「教科書を読めない、読まない」「文章を書かない、書くのが苦手」な生徒が多い中、白板を見て、説明を聞き、目で追いながら、「時間内」に手を動かしてノートに正確に写す。例えば、「ノート」に書いた英文を様々な形(講師が日本語を言ったら、ノートの英文の中から見つけ、その英文を音読する、講師の後について単純にリピートする、講師が読む英文をディクテーションするなど)で「授業」でも活用できる。
「きれいなノート」で「勉強ができる」のは理想だが、別の方法で「学習効果」を出す「ノート」を作ることは可能だ。
例えば、学校の先生の作成するプリント、最近では、『書くところ(埋めるところ)』が異様に多いプリントが宿題(特に東京都の私立の中学校・高校)としてタブレットに送られてくることが多いようだ。これを自分なりにできない部分や説明を増やし「ノート化」「タブレットでの弱点ノート化」することも可能だ。
さて、ここで自分の教室のことを少し振り返ってみたい。入塾し、6か月ぐらい経つと…
「ちょっと待って、それ、大切そうだから消さないで」 「ウチ、この問題ダメだ…もう一問一緒に解いてくれますか」 「今先生が言ったこと、大切ですよね、白板に書いてください」 「ちょっと待って先生、いらない紙もらえますか、もう一度、今解きたいんで」
と徐々に生徒が言うようになってくる。こうなってくると、高校受験でも大学受験でも「推薦合格」のレベルにまで達するのに時間がかからない。塾では、「コミュニケーション英語の教科書1P1分音読」や「計算を先生と競争」などのコーナーも取り入れ授業の合間に「時間内」の意識を高める訓練もしていた。
ノートの構成に関しては、「ここに線を引いた方が見やすくなるよ」「漢字とひらがな、カタカナの大きさをちょっと変えてみたら」「後で見直すのであれば、英文の下に和訳を書かないで、左に英文、右に和訳と文法の説明にした方がいいかもね」というようなアドバイスはするが…ほぼ生徒に任せていた。テスト前の仕上げで「A4の裏紙」に小さな字で教科書の全文を写す(時間がもったいないので彼女はノートの字もだんだん小さくなっていった)生徒、スマホのアプリで自分用の問題集を作る生徒、それぞれの生徒たちが各自工夫しながら「模試」や「定期試験」に臨んでいた。
他塾の生徒のことではあるが、とある塾の生徒は、社会の時間、集中し、学校の先生の言った言葉すべてを「ノート」に取り、偏差値を「爆上げ」したという…「授業を大切にする」とは、まさに、こういうことではないだろうか。
得意教科だからこそ、「細かい部分も見逃さない」。苦手教科だから、「すべてとにかく先生の言ったことを逃さない」…。
そうでなくとも、「50分」「60分」「90分」の授業の中で自分の知らないこと、分からないことが1つ、2つでもあれば、それは絶対に見逃すべきではない。先生の「ギャグ」や「恋バナ」の時だけ、授業に参加するのではもったいない…そもそもその子の成績があがらなければ、「親が塾をやめさせてしまうかもしれない」ということを「塾の講師」も「生徒」もしっかりと意識しなければならない。
「別解なんて知らなくてもいい」とよく生徒たちは言う。例えば、「不定方程式」の問題では、普通の定期テストでは、あまり「特殊解の求め方」は出題されない。これは、「ユークリッドの互除法」が苦手な生徒があまりにも多いことに関連していると思われる。しかし、特殊解を「どのように求めたか、分かるように書きなさい」という設問がしつこく出題されないとは限らない。おそらくその設問で「x,yの組み合わせだけ」書いたのでは、「一般解」の設問で「正解を書いたとしても」減点される恐れが高いと思われる。ただし、「ユークリッド互除法を使って」と指定がなければ(つまり、どんな方法でもよければ)部分点は取れる。考えてみて欲しい。
「高校入試」や「高校の定期試験」「大学入試」では「数学」で「二次方程式の解の公式を導け」「三平方の定理を証明しなさい」「正弦定理を証明せよ」という問題が最近より多く出題される傾向があるように思う。「教科書準拠の学校ワーク」や「4step」の問題を解くだけではなく、実際に「教科書」で確認し、手を動かして、時間内に解けるか確認することが大切だ。「丸暗記」ばかりに頼ってしまえば、途中で息切れしてしまう生徒が続出するのは当たり前のように思える。
「ノート」を使わない時代がいよいよ迫ってきた。「漢字の書き順」は20年後、30年後には「アルファベット」の「筆記体」のような存在になってしまうのか。ただでさえ、「ノートを取るのが遅い」「記述問題に手が出ない」生徒たちはどのようにタブレットを使いこなし、各教科の「解答欄」を埋めるのか。「入試」になれば、「入力方法(キーボード、スタイラスペンなど)」によっても得手不得手の差が「時間」や「ミス」に出てくるだろう。今後の「入試制度」にも注目したい。
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