「お母さんも数学苦手だったのよ」…この何気ない一言が成績を左右することも!
「先生に叱られるから宿題をしなさい」より強烈な影響を与える言葉!
「ウチ、数学できないんだよ。だって、お母さんも数学苦手だって言ってたもん」
★生徒が以前、講師室で放った言葉に大きな衝撃を受けた。何気ない保護者の一言が「生徒」の苦手意識を変えられない場合もある。
或る夏期講習の昼休み。講師室に中3生のA子が来た。
「先生、このね、宿題の『It to構文』の英作文、やってきたんで見てください」「ん、宿題だから、次回の授業の時に答え合わせをするよ」と答えながら、一応、開いたノートを素早く確認する。時制・数・語順・構文の使い方も間違っていないし、スペリングや英単語・熟語もOKそうだ。「それより、A子、最近数学の調子はどうなの」
A子は、中3受験生。英語が得意な生徒で、内申は「4」と「5」を行ったり来たり、偏差値もまずますだ。「夏期講習」を受けている最中だ。せっかく質問をしに来たのに、僕の態度に、A子は、ぷうっと頬を膨らませ口をとがらせる。
これは、ちょっと言っとかないとダメだな、と思いながら、覚悟を決めるため、外の様子を確認するふりをして窓の方を向いた瞬間、N先生と目が合った。
N先生は、A子のクラスの「数学担当」の先生だ。今年授業を受け持ったばかりの大学生のイケメン講師。
夏期講習前、中3担当の講師が集まり、「会議」があった。その時に塾長が「N先生、夏の間に、A子の数学何とかしてくださいね」と念を押していたのを思い出す。A子の「数学」は、中1の内容からしっかりと復習しなければならないレベルだ。
ノートから顔をはなし、声をかける。「A子、今、数学をコツコツやっておかなきゃ、後でつらくなるぞ。宿題はちゃんとやってる?」
「だって、分からないもん。できるわけないじゃん」
「お母さんも言ってたよ。数学は母さんも苦手だったのよ。」って。
「先生、これって遺伝だよ、遺伝。」
「人間って努力してもできないことってあるよね。私、数学大っ嫌いだし。」
予想もしていなかったA子の言葉にしばし唖然としてしまう。
数学のN先生が席を立つ。と、そのまま講師室を出て行ってしまった。
さあて、どうするかな、このまま帰すとまずいな、と思いながら、A子の気持ちを落ち着かせるためにとりあえず、英語の質問の解説を始めたのであった…。
★生徒に「遺伝」と言われると、「やってみよう」「何度も練習すればできるようになるよ」という講師の励ましの言葉の威力は半減する。
これ以外にも、「父さん、英語が苦手だったな、単語のテストなんか全然点数取れなかっよ」
「母さんも学生時代、数学なんて何の役に立つのって思った」
「地理なんて全然面白くないじゃん、数学と英語だけしっかりやっておけばいいんだよ」
など、両親が言っている言葉を「勉強したくない」「点数が取れない」ことの「言い訳」にされてしまうと、せっかく「宿題は実力アップのために必ずやろう」「もう一度家で解いてみよう」という講師の「声かけ」も言葉の意味が薄れてしまう。
保護者の方々も「そんなつもり」で言ったのではないし、塾でお子さんが、まさかそういう場面で使うなんて予想だにしないことなのだろう、とは推察する。
この結果、保護者サイドは「そのためにせっかく塾に行かせているのに」となり、一方で塾サイドは「何度声をかけても本気になってくれない」「自習室で居残り勉強をしても一向に手が進まない」となってしまう。
この現象は、実際に塾に通っている場合に限らず、通信教育やネットでの授業参加の際にも見られる。「説明が自分でわかる範囲の問題」は解こうとするが、一歩踏み込んだ応用問題や作文系の問題は「手を動かす前にあきらめる」生徒が意外と多いのだ。
塾で、たとえお子さんと相性の良い講師に出会えたとしても、「楽しい」「分かりやすい」ことが「時間内に正答にたどりつく」わけではない。
保護者の方はぜひ、ご自分の成功体験を生徒に話していただきたい。
「自分が嫌いだった、苦手にしていた」ことを「どう克服したか」をぜひ、お子さんに伝えていただきたい。面談でせっかく「うちの子、やればできると思います」と伝えていただいても、「お父さんも苦手だった」「お母さんも苦手だった」から、「自分もできなくて当然だ」という意識がどこかにある限り、成績を伸ばすのに時間を要することが多い。
受験は、時間との「勝負」だ。たとえ「推薦」であっても、それなりの「成績」を「定期テスト」で出すことが必要なのだ。
そのためには、「目標」があった方がよいと自分は考える。中3受験生、高3受験生は、ぜひ、この夏、「自分の受験」する「学校の過去問」に目を通してほしい。今、「解ける」「解けない」は関係ない。
そして、来年、受験シーズンまでに自分が解けるようにするんだと思うのではなく、今、自分が何を解けそうで、何を全く分かっていないかを分析して欲しい。多くの受験生は、「1月の時点で解ければ問題ない」と考えてしまいがちだ。それでは、時間が足りなくなるケースが多いのだ。
例えば、「英語の長文」が苦手ならとりあえず一題解いてみよう。そもそも読めないのであれば、分からない「単語」をノートに書きだし、意味を調べ、とりあえず「選択肢」を訳してみる、そして長文に戻る。それでも何が書いてあるか分からないなら、分からない文を塾の先生に質問していよう。「関数」が苦手なら、「関数」がこの夏できるように、比例・反比例、一次関数、二次関数を1日5題ずつ攻めてみよう。「要約」が苦手なら、解答を見ずにまず、自分で段落ごとにまとめてみよう。
夏期講習の宿題もあるし、学校の宿題もある、そんな時間はない、というかも知れないね。でも、受験期になってから基本から勉強しようと思ってもそれこそ時間がなくて困るんじゃないかな。「敵を知り」「自分の実力を知る」、そして「計画的な勉強」で受験に向かうことが大切だよ。
夏休みは「長い」し、時間をかければ苦手なもの少しずつできるようになる。存分に勉強して欲しい。そして、「あいつ、この夏変わったよな、偏差値バク上りだもんな」と言われるように成長する夏であって欲しいと願う。Do your best!
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