日記 二十三の巻

2025年12月8日

2025年12月 第1週土曜 「塾長、それはないっす」

▶2件目の塾に勤めた時、「英語」と「数学」「理科」の先生がすでにいたため、1年目、自分は「国語」を担当することになった。

・まあ、田舎の上位の進学校出身とはいえ、そもそも全国の偏差値で言えば大したことがないし(たま~に東大に合格するような、とんでもない秀才も中にはいるけどな…環境的にその高校しかなくて、仕方なく通うすごいヤツおんねん)、ま、自分の大学での専攻が、「塾講師」というイメージがあまりにもかけ離れている学部だったこともある…。

・ゆえに、塾長面接の際は、自分、何も言ってないのに「いきなりどこの馬の骨ともわからない人にうちの上位クラスの大切な生徒を任せられん」と頭ごなしに、どの塾でも言われた(うふっ、一応カシコく見えたんかな、自分)。すました顔で「見てろよ、ジジイ」と心の中で叫んでいたのは言うまでもない。自分にも、高校時代から、家庭教師の経験もあったし、高2、高3の時は、まがりなりにも授業料免除生だったという「プライド」はある。

▶さて、講師試験や採用面接の話はまた今度にして、今日は、2件目の塾で感じた「数学」を教えていた時、感じたことを少しだけ伝えたい、自分の「数学講師デビュー」の話だ。

・勤めて3年目の春。3月から、突然「数学」を教えることになった。

「青天の霹靂」の「寝耳に水」の…「藪から棒」であり「馬子にも衣裳」の「着る物次第」である。

・何せ、自分にとっては、「一次関数の応用」や「平面図形・空間図形」「数Ⅰ・A」などに「大穴」がある教科である。履歴書にも、「数学」と「理科」は苦手や、と書いたはずなんや…。

「T君なら、中1から順番に教えていったら6年で『数ⅢC』まですぐに教えられるようになるよ」と塾長が平気な顔で言う。ホンマ、どこの塾でも塾長ってけっこう勝手よな。「すぐに?」「6年?」…「馬鹿野郎、オマエが教えてみろ」と背後から全力で「カメカメ波」を打つ。

・だいたいな、1年で勉強したもんなんて、どんなに真剣にやったとしても、たかが知れてるで。どんなオツムしとんねん。1年でマスターできれば、大学入試はだれも苦労はせんねん。「大学」は4年間やけど、この4年間学んで、その道で通用する人、一握りやで。音楽大学や美術大学卒業後、何人が「世界を舞台」に活躍できんねん。医者だって、「名医」になるような人は卒業後も色んな経験や研究を続けてるやん。

▷でも、決まった以上仕方がないわな。しがない会社員や。とりま、3月中の授業は、集中的に小学校で習う「四則計算」をすることにした。とにかく、問題を選んで、プリントを作りまくった。

さて、「新中1」の春期講習はどうするかテキストは自作にするとして…。あまり、厚いとやる気も出えへんやろし…。ポイントは、小6の「復習」と「-(マイナス)ルール」やな。

・当時の「1教室」は「10人前後」。

初めての「定期試験Ⅰ」まで、「3月春期前の授業」「春期講習」「4月からの授業」「4月以降の塾での勉強」「対策授業」とたとえ「宿題」をやらなくても、5回はテスト範囲を勉強できる

・当時の塾の先生が、「ロケットスタート」だの「初めての定期テスト、英数100点」と掲げていたわけは、

「せまい範囲」を「何度も復習すること」ができ、「高得点を取りやすい」し、

「高得点の生徒」が多いと当然「塾の評判」も上がり、生徒増につながるから。

・さらに、「正負の数」でつまずくいてしまうと、「数学苦手ジャン」になる恐れが高く、後々、教える方も、が大変になってくるから、なども理由に挙げられるからだ。

・小6の復習は、「濃さ」や「比例・反比例」などをテキストに組み込めればよいが、すでに小数・分数に「花粉症なみ」の「アレルギー」を示す「数学苦手ジャンs」予備軍が講習で来る恐れがあり、「小6までの四則計算」だけでも、消化不良の生徒が必ず出てくる。時間が余った「数学得意ジャン」用の「挑戦プリント」を用意しておくのがよい、とそのときは判断した。

▷そうなると、「正負の数」「文字式」につながるような、小数・分数を含む「四則計算」や「1行問題」の復習が前半4日間、「-のルール」を含む簡単な「正負の数の四則計算」「文字式」の導入が後半4日間、そこに、数学得意ジャン用の補助プリントを作る、ということになるか。

最大の難関は「-(マイナス)のルール」だ。ここで、「数学苦手ジャン」が大量に生まれる、まさに別の意味で「生まれいずる悩み」だ…。有島先生、すみません…。

・当然、自分も「-」の考え方を教えることで悩むことになった。

・前にも話した通り「数学得意ジャン」は、ここで、なにも悩むことなく「-(-5)=5 または+5」や「(-6)×(-3)=18 または+18」を自然に受け入れ、力強く使いこなす。なぜかその姿は、数十両もの貨物車をけん引するD51重連の姿を想像させる。

どうせ教えるのなら、「数学苦手ジャン」を一人でも救いたい。

・この時から、本屋、図書館めぐりが始まった。

▷「-のルール」には、さまざまな説明方法があるよてってにな。例を挙げると、

・「1日100円ずつお金が減る(-100円)ということから逆算で考えると1日前(-1日)は+100円持っていなけばおかしい…-100(円)×(-1)=100または+100」で「(-)×(-)=(+)」を説明する形。これは、図書館で借りた本とネットで見た記憶があるで。

「+5」の逆は「-5」マイナスは「逆の命令」-(-5)は、(-5)の「逆の命令」なのだから「+5」。これは、中学校でも塾でもよく聞くよな。

・「トランプの赤黒のカードで考える(サピックスの本より)」

・「-5+6をプラスの数とマイナスの数を比べ、プラスの方が1多いので、答えは+1」こいつもよく聞く。差を取って多い方の符号をつける考え方。

・「-5-6」をは両方ともマイナスで、マイナスが全部で11だから、-11と考える」これも一般的よね。「同じ符号」なんやから、「全部でいくつ」という考え方。

・「-(-5)の(  )の前のマイナスを、カッコの前はかけ算という考え方を使い、(‐5)の前の『‐』を『-1×』と考え、-1×(-5)、『マイナス×マイナス』だから答えは『+5』と考える…この考えは、文字式の分配法則  a(b+c)につながっていく ※aが-1の場合、『-1×』の『1』は省略されるので、-1(b+c)=-(b+c)=-b-c」

などなど。

▶初めて「数学」を教えた生徒の顔、今でも浮かぶわ…。教壇のある教室で、白板は壁に打ち込んである教室やった。足は震えんかったけど、声は多分、うわずってたと思う。